鬼門の便所 ”現代日本の家相学” 祥氣舎より発売中
[鬼門Q&A]
多くの家相本や暦では、水洗と非水洗の別なく鬼門の便所を大凶としていますが、現実には溜めおき式でも鬼門の便所が直接災いしたということはなく、詳細に調べると大概は移転の方位など、他に原因が見つかります。
家相などに頓着しないマンションは、間取りが同じなら必ず反転していますから、北西の便所の家の西隣の便所は必ず北東(鬼門)にあります。だからと言って一軒おきに災いを受けたと云う話しは寡聞にして存じません。
普通の人にとって自分の家を持つというのは、買うにせよ建てるにせよ、生涯にそう何度もない大事業です。普段は家相など占いだ、迷信だと無視している人でも、我が家のことになれば別物と考えてか、或いは仕方なしか分かりませんが、奥さん(ご主人)に連れられて来る人は少なくありません。「家相は占いのように思い付きでも、意味のない迷信でもないし、畳の枚数で吉凶を云々したり、吉は吉、凶は凶というような観念的なものではなく、生活の知恵でもない。勿論一部の建築家がいう科学的な根拠はないが、それに勝る根拠に基づいた哲学であって、墓地選びや都市計画の思想を流用した「風水」などとは根本的に違うものだ」と例示して説明すると大半の人は納得してくれるのですが、30分近くはこれに費やされます。
これより困難なのが鬼門で、相談者に「鬼門は大事な方位である」と言えば納得を得やすいのですが、「他の方位と変らないから鬼門にトイレがあっても差し支えない」などと言うと、多くに人は心配顔になります。家相鑑定という仕事だけを考えれば、世間の俗説に従った方が多分喜ばれるでしょう?・・・・・・・が、陰陽五行説という基本に忠実である以上、商売上は有利であっても迷信に従うわけにはいきません。
実際の設計には、住人の生年月日をみて無難な方位で尚且つ使い勝手の良い場所に決めますが、それが鬼門の角であった場合は、できるだけ避けることにしています。何故なら、新築を祝いに来る人の中に家相に興味のある人がいると、あっちこっち見て回った後、生半可な知識を披露することが多いのです。
「あなた、なぜ鬼門にトイレを造ったの」
施主は納得のうえにせよ、良い気分はしないと思うからです。
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